The Japanese Study Abroad booth at the NAFSA Conference in Washington DC.
マイク マツノ著 (Written in 4/2015, but never posted. Observations are still relevant) ここ数年間文部科学省は、学生が「グローバル人材」となるように導き、そうすることで世界における日本競争力を高め海外で活躍できるよう、大学に対して積極的に働きかけている。その結果、近年多くの大学が、交換留学や派遣留学の機会、インターンシップ、そしてESLプログラムを作り上げ、さらにそれらを発展させることを目的として海外の大学と提携を結ぶべく、海外教育フェアに参加することに関心を寄せている。提携を結ぶ可能性のある海外の大学と巡り合う最初のステップでなおかつ最も簡単な方法は、北米におけるNAFSA、ヨーロッパにおけるEAIE、そしてアジアにおけるAPIEといった大規模な海外教育フェアに教職員を派遣し、自らの大学のブースを構えることである。昨年ボストンで開催されたNAFSAの年次総会では、9,000人以上が参加し、日本の合同ブースである”Study in Japan”は、30以上の参加大学と共に、会場で最も広いスペースに陣取った。NAFSAの年次総会のような海外教育フェアに参加する目的は、海外の教育機関とのネットワークの構築、将来提携が可能だと思われる大学を探し実際にその大学関係者とのミーティングの実施、そして現在の提携大学関係者と再会し現状を報告し合うことである。国際教育への関心が増し、NAFSAの年次総会のような海外教育フェアに参加する大学が増えることは大変心強いことである。しかしながら、特にもし参加大学が実用的かつ有益な情報と結果を持ち帰ることができないのならば、量の多さが必ずしも良い結果をもたらすわけではないことに注意しなければならない。海外教育フェアで得た結果と価値を推し量り査定することは簡単ではない。とは言え、専門能力の開発、そしてその能力を向上させるためのトレーニングを受ける機会を得るという意味では、教職員にとって確実に価値のあることである。 海外教育フェアに参加した日本人の教職員が全体的にフェアを振り返った際、「25の提携大学関係者と重要なミーティングを行い、ネットワークを広げる機会を得ることができた」と語るとするなら、そういった報告を耳にしたり、あるいはそう書かれた報告書を目にしたりすると、「価値のあるフェアへの参加だった」と思うかもしれない。しかしながら、その重要なミーティングが実際に具体的で実現可能な結果をもたらしたのだろうか?彼らの所属大学に 価値ある持ち帰り品(take home value) をもたらしたのだろうか?そう考えると、「海外教育フェアに参加した日本の大学やその国際交流担当部署の所長は、NAFSAの年次総会のような海外教育フェアにおいて大いに存在感を示すための戦略を本当に理解しているのだろうか」といった疑問が湧いてくる。そもそも、参加大学は、明確な目的や客観的で具体的に測ることができる目標を設定しているのだろうか? 国際教育や海外留学に携わる政府機関・非政府機関であるJASSO・JAFSAから、毎年海外教育フェアに参加すれば比類なき素晴らしい経験が得られるという説明を聞いたことがある大学は多いだろう。初参加を促すため、「国際化」「グローバル人材」「国際人」といった魅力的ではあるが抽象的なキャッチフレーズや用語もよく耳にするだろう。しかしながら、大事なことは海外教育フェアに参加するかどうかだけではない。初めて参加する大学にとって、参加に先立って十分な準備ができるほどのガイダンスや具体的な情報を得られることができているのかが問題なのである。著者は、これまで10年にわたって積極的に海外教育フェアに参加してきた。初めて参加した大学の多くが、そのフェアで何が行われていて何をすべきかが理解できるだけの経歴を持ち合わせていない、準備ができていない、あるいはどういった結果がえられるのかを予想することもできていない様を目にした。彼らは、海外教育フェアに参加することが大学や学生のためのどのような実益をもたらすか、また参加費用に見合うだけの価値があることが理解できていないのである。 もちろん、初参加の大学のほとんどは、どのようにして提携できる米国の大学をさがすとよいか、海外教育におけるネットワークを構築するにはどうすればよいか、自身の大学を積極的にプロモートするための方法は何か、新たな提携大学と会うために何をすべきか、といったかなりミクロレベルの疑問点を解消にしようと努めてはいるだろう。 マクロレベルで考えてみると、海外教育フェアに参加すべき多くの理由が挙げられる。最も一般的な理由は、学生とキャンパスの国際化であろう。そして、大学は、日本の将来に向け学生がグローバル人材となって卒業できるよう準備し、訓練し、そして教育することを目的として、交換留学や短期研修の派遣先となり得るし、そして多様な提携大学が必要になるであろう。また、現存する提携大学との関係を維持し、海外教育フェアの場で実際にミーティングをすることも必要であろう。 さらに、海外教育フェアに参加することで、参加した日本人の教職員には100以上の数のワークショップを経験する素晴らしい機会が与えられる。それらのワークショップは、教職員の専門性向上とキャンパスの国際化のための実用的な情報を与えてくれるものである。そして、世界における国際教育の重要性や可能性と共に大学キャンパス国際化を促進する方法をより深く理解することが可能である。もちろん、ワークショップにおけるプレゼンテーションは英語で行われるため、参加する教職員は英語に堪能でなければならない。著者が10年以上にわたって経験した海外教育フェアにおいて、そういったワークショップに実際に参加した日本人の教職員は多くない。貴重な機会を逃しているのである。 また、大学と国際教育に携わる部署の管理職が留意すべき重要な点として、海外教育フェアの開催前、開催中、そして終了後のフォローアップにて、参加する教職員それぞれの責務が何であるかを明確に指示することが挙げられる。加えて、海外教育フェアに参加するはっきりとした目的と望ましい結果が何であるかも理解しておくべきである。 ほとんどの大学は、大抵2名の教職員を海外教育フェアに派遣する。そのうち1名は国際交流担当部署の事務職員で、残りの1名は教員、通常その部署の所長や副所長であることが多い。国際交流関連事業に多くの予算がついている大学や、文部科学省から助成金を受けている大学の場合、2名以上、時には半ダース以上といった多くの教職員を参加させることもあるだろう。 海外教育フェアに参加する際に必要な費用(ホテル代、交通費、日当、ブース代等を含む)として、1名につき70万円ほどもかかることは容易に想像がつく。もし2名が参加するならば、1回の海外教育フェアで140万円の出費となる。ここで大学が、費用対効果の観点から考えるべき重要な点は、1週間のみのNAFSA年次総会に約140万円もかけて2名の教職員を参加させる価値があるのかどうかということである。さらに、留守中に彼らの仕事をカバーする人手にかかる、実際の経費上には現れない費用も発生する。 もし、先述した海外教育フェア(NAFSA、EAIEとAPIE)全てに参加する場合、大学にとって、年間約420万円の出費になる可能性がある。もちろん、参加する教職員は、自らの専門性の向上、目から鱗の経験、ネットワークを構築する機会や場合によっては開催地を観光する機会も得ることでき、海外教育フェア会場での刺激やエネルギーを肌で感じることができる。しかしながら、それだけの費用をかけて参加したフェアから、実際どれほどの「価値ある持ち帰り品/ テイクホームバリュー」を大学にもたらすのだろうか? End of Part 1.
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